「やがて君になる」考察ブログ

アニメ「やがて君になる」の考察ブログです

アニメ「やがて君になる」色に纏わる演出の考察

アニメ「やがて君になる」(©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会)の色を使った一部演出の意図について、自分なりに考えてみました(最終話までネタバレあり)
主な関心は、夕焼けの空の色。青、ピンク、オレンジについて。主要キャラ燈子と侑のイメージ関連です。
私の思考の流れを時系列順でまとめていきます。

青:燈子 侑:ピンク

アニメ1周目を見終わり、感想を漁っていた私は、他の方々の考察ブログ(最後にまとめてあります)による青=燈子ピンク=侑を表しているのではないか、という説に深く納得しました。

この説の主な根拠となるのは、OPの紫陽花の花びらと第5話「選択問題/続・選択問題」です。(第8話「交点/降り籠める」の紫陽花も関係しますがここでは割愛)

・OP冒頭の紫陽花の花びらと花言葉
燈子の手に落ちる花びら:
侑の手に落ちるの花びら:ピンク
花言葉
青:貴方は美しいが冷淡だ、無情
ピンク:元気な女性
侑の手の甲に落ちたままのピンクの花びらに対し、燈子の側に落ちた青の花びらは、その後2人の親指にやんわりと押さえられ、2人の接点、繋ぐものになる。
→作中で燈子の気持ち(青の花びら)が、2人を結びつけるきっかけとなり作中で関係性に大きな影響を与えている事を示唆していると考えられます。また、花言葉も2人のイメージと合致するものです。

・第5話のシーン
「確かにわたしは七海先輩じゃないといけない理由はないと思うけど」侑、筆箱から青いシャーペンを取り出す「だけど、わたしのことが一番必要なのは七海先輩なんだろうって。それはわかるから。先輩が一緒にいてって言うなら、そうしますよ」
→燈子でないといけない理由はないと語りながらも、ひとつ取り出されるのは""いシャーペン。前半で「わたしは選ばない」と語った侑だが、求められた結果一緒にいる事にする相手は燈子。燈子=青の図式
なお前半の勉強や他の回でも使うシャーペンの色は基本的に燈子:ピンク、侑:青。

その上で、作中2人にとって大事なシーンになる事が多い夕焼けの時間帯を見ていくと、その時の空は単純にオレンジなだけではありません。場面によりますが、青に加えて、オレンジともピンクとも言えぬ色合いの雲と空が溶けあっている事が多いと気づきます。
そっか!あれはピンク。夕焼けは青+ピンクで燈子+侑だったんだ。2人の色が混ざり合う時間だったんだ!…と思いました。

青:七海澪になろうとする燈子 オレンジ:ありのままの燈子 ピンク:侑 …?

さて、そのままアニメ2周目を見ていた私は気づきます。オレンジにも意味があるのではないだろうか。

根拠とするのは第10話「私未満/昼の星/逃げ水」のシーンです。
七海家の夕食。「燈子、無理しなくてもいいんだぞ」(略)「生徒会劇なんて…」。その後、父親に言われた言葉を暗い自室で思い出す燈子。「私はやりたくてやってるだけなのに、どうしてそういうこと…!」宿題でノートに文字を書いていた途中で、オレンジ色に見えるシャーペンを置く。
→これを、私は「燈子がオレンジを手放した」と解釈しました。姉になるために、素の自分をいらないものと扱う示唆かな、と。
燈子の「燈」は「橙(だいだい=オレンジ)」とも偏違いでよく似ています。だから七海澪になろうとする燈子:青飾らない状態の燈子:オレンジで燈子の2つの側面を表しているのではないか、と思ったのです。

またオレンジは他の場面にも出てきます。
・第12話「気が付けば息も出来ない」
侑の自室で2つのアイスキャンディ「オレンジとグレープ、どっちがいいですか?」「グレープかな」(問うているのは味だが、見た目の色もそのままオレンジと紫色をしている)
・第13話「終着駅まで/灯台
水族館のカフェ、燈子の飲み物とストロー:水色(青)侑の飲み物とストロー:オレンジ
「侑が好き!」侑、飲んでいたカップを下ろす。ストローに滴が残る。垂れそうで垂れない。~(略)~
「矛盾しててもいいんじゃないですか。別に」燈子、驚いたように侑の方を見る。侑はジュースを飲んでいる。
→二側面と見て、燈子は青(姉になろうとする燈子)を選択しており、侑はオレンジ(ありのままの燈子)を望んでいる事を示唆してるのではないだろうかと思いました。

第13話最後「乗り換えですよ」の後のカット。電車の扉の向こうは夕焼けのオレンジ一色に染まっていた事もこの解釈の後押しだと思いました。

そうか!あれはオレンジっぽくも見えるピンク(単色)じゃない。夕焼け空の青+オレンジ+ピンクと3色で燈子の二側面と侑のことだったんだ!
…ところが。

青とオレンジ、燈子二側面説の疑問点

きっかけ、Twitterで「やが君」の感想を漁っていたら「オレンジは侑の目の色~」という趣旨の発言を目にします。
思い返してみれば、侑の髪色、目の色ってオレンジとピンクどっちとも言えなくはない色ですよね。あれれ、オレンジって本当に燈子…?

さらに疑問を感じる部分は増えていきます。
・燈子の「燈」→「橙」が成り立つのなら、侑の「侑」→「夕」でそのまま夕暮れのイメージの色(≒オレンジ)にもなれるのでは?
・OPでタイトルとして出る「やがて君になる」の文字色、基本は黒です。しかし少し立つと文字の一部にじんわり青とオレンジが付きます。
や→青、が→オレンジ、て→青、君→青・オレンジ、に→オレンジ、な→青、る→オレンジ。
君()
「君」は両方、他のひらがなは順番にどっちかの色。
→燈子二側面説で解釈するなら、青もオレンジも燈子の色、「君」が両方である事から、姉になろうと努力する(青)ありのまま(オレンジ)両方を兼ね備えた燈子になる、という事になります。これ自体はそこまで不自然ではありません。
しかし、"侑と燈子2人の話"にこだわって、生徒会劇でなく水族館でアニメ1期を締めくくった公式さんです。タイトルで燈子一人だけを示唆するでしょうか?
・やが君ラジオのディスク1が青、2がオレンジとの情報を入手
→上と同じ理由です。やが君において、青とオレンジが意味を持つ事は確定と言えますが、それが燈子と侑の2人ではなく、燈子だけなわけないですよね。そこには侑もいるはずです。

…もしかして、青:燈子、ピンク+オレンジ:侑 なのでは? そんな考えが私の頭を駆け巡ります。

青:燈子 ピンク+オレンジ:侑

この疑問を胸に、初めにオレンジの意図を感じた第10話から該当部分を見直してみました。

・第10話
燈子の使っていたシャーペンは確かにオレンジに見えます。ですが、それは、卓上ランプの光に照らされているから。
そう、よく見ると燈子がいつも使ってるピンクのシャーペン、それに照明の光が加わる事でオレンジに見えていたのです!
つまり、「燈子が(元から)オレンジのシャーペンを使ってる」は誤りでした。見間違い。
第8話「交点/降り籠める」で侑と沙弥香の前にあった紫陽花が黄色(白が夕陽に染まっていた)とピンクだったように、元とは見える色が変わっていたのですね。
じゃ、じゃあなんで燈子はシャーペン置いたのか。第10話のシーンの続きは以下の通りです。
燈子、オレンジに見えるシャーペンを置く。そしてその手でスマホを取り、躊躇いつつも最終的に侑に電話をかける。
→新解釈は、暗い部屋の中、精神的に追い詰められている燈子。その中で照らされたオレンジ=侑=救い→電話、ですかね。

その他の部分もオレンジ=侑として見ていくと
・第12話
「オレンジとグレープ(青)で、青(姉になりたい燈子)を選ぶ燈子」というよりは、グレープの紫は≠青「オレンジを選ばない(侑の気持ちに気づかない)燈子」
・第13話
「侑が好き!」と言われ、飲むのを止める。ストローの先で少し滴のように溜まるが零れ落ちはしないで留まる。
→飲み物はそれぞれの気持ち。侑は気持ちはあるものの好きという言葉を返せない。
「矛盾しててもいいんじゃないですか」(侑に好きと伝える事で、自分を確かに実感でき安心するという燈子の気持ちの肯定)
→侑は心からの気持ちを言う=飲み物を飲んでいる。
・電車「乗り換えですよ」のオレンジ
→自身を嫌い姉になろうとするのでなく、自身を肯定できる燈子に変わってほしい、そんな侑の願いの先の示唆?
・タイトルの色
→青とオレンジは燈子と侑の2人

そう、夕焼けも青とピンク+オレンジで燈子と侑だったんだ!!!
この説で概ね解決です。

青・ピンクとオレンジは変化前と変化(後)

基本的に、前の項で述べた、燈子:青、侑:ピンク+オレンジの流れは同じです。

ただ夕焼けの空、侑の髪と目の色はオレンジとピンクが混じった色と言っていいでしょう。しかしOPの始まりで落ちてくる紫陽花の花びらは明確にピンクです。紫陽花にオレンジ色がないというのはありますが、完全にピンク=オレンジとも思えません。ピンクは物語の始め時点の色ではないでしょうか。

侑のピンク。ピンクと言えば桜が思い付きました。第1話で、侑にとって「わたしは星に届かない」(=好き・特別がわからない)と自覚する事になる告白をされたのがピンクの桜舞い散る木の下でしたね。

第10話から
ピンク+光(きらめき)→オレンジ
ピンクは光に当たってオレンジになる。
作中で特別を知った侑の場合、表す色は時期や状況次第でピンクとオレンジ2つになるのだと思います。

しかし、タイトルなどを見てもわかるように、青-オレンジの2色対比でピンクは登場しなかったりします。これは単純に配色バランスや数の問題かもしれませんが。
一応、燈子の「燈」と「橙」の旁が一致していることから、オレンジにも燈子の要素はあると言えなくもありません。また物語開始当初、特別を知らない侑はしばしば深海の演出や「水」のイメージが使われます(OPの侑の足元など)。侑=水=青の印象もゼロとは言えません。
ここから、人物を指すだけでなく、この作品において青は変化前、オレンジは変化(後)の象徴にもなっているのではないかと思いました。

つまり、
作品開始時の「七海澪になろうとしている燈子」「特別を知らない侑」が青(水色)とピンク。
アニメ1期では、燈子はそこまで辿り着いていませんが「(努力も含めて)ありのままの燈子」「特別を知った侑」と変化するとオレンジという意味ではないでしょうか!
単純に作中の位置付けとして、変わらない燈子変化する侑が1期の流れなので、タイトルは青とオレンジの2色だけで燈子と侑の2人、変化(の前後)両方を象徴できるのです。

まとめと結論

作中何度も出てくる夕焼けの空。夕焼けという時間帯は、陽が沈むことにより""から"オレンジ"に染まりゆく「変化」のときです。またその中にはオレンジになりきらず"ピンク"色に見える空もあります。
紫陽花全体の花言葉は「移り気」、「やがて君になる」というタイトルも「徐々に移り変わること」を意味する言葉であり、この作品において「変化」がとても大事なキーワードなのは間違いありません。

変化する前変わるとき(後)の色としての青・ピンクとオレンジ。まだ1期では変わっていない燈子と、すでに好きを知って変わった侑の青とオレンジ。
これが「やがて君になる」作中の色の意味だと考察しました。

おまけ

第10話
・燈子の短冊の色→水色
・オレンジに見えるシャーペンをスマホに持ち替え、侑に電話
→相手の侑はすでに光が当たり変化した後のオレンジ。どうでもよさそう-どうでもよくないよ、の対比の前触れ。
第12話
・「オレンジとグレープ、どっちがいいですか?」「グレープかな」
→変化(オレンジ)を選ばない燈子、または変化した侑の気持ち(オレンジ)に目を向けず気づかない燈子。
第13話
・Echoにて「ここの後に、新しいシーン入れるって話じゃなかったっけ」脚本の修正をする(内容を変化させる)こよみのシャーペン→オレンジ
・Echoにて「新しい台本を読んだら、七海先輩は何て言うだろう」侑は青いシャーペンを口元につけ、離す。
→姉を目指す状況の燈子に、口を寄せる(新しい台本の内容を知らせる)もしくは、その後「会いたい」が続くので思慕の口付け
・イルカショーに行く前のシーンの天井
黒い線上にピンク、青(中央)、半分画面外のオレンジの薔薇
→作品の流れのメタファー。半分画面外なのは、燈子の変化はこれから先(2期の領分)だから
・燈子のイルカのストラップ→水色、侑のマンタのストラップ→ピンク

参考ブログさん

(やが君8話考察頁に対するリンク)
総じてみなさん、第8話の紫陽花の色について、青=燈子、白=沙弥香、ピンク=侑、と人物とリンクした考察をされています。
概ね根拠とされているのは色ごとの花言葉と、それぞれのペアが眺めていた紫陽花の色のペア。
その色をどう捉えているか細部の考察はやや異なっていたりするのが面白いところです。
やがて君になる 8話 考察 感想 - やが君 考察
根拠としてOP冒頭の花びらや第5話「選択問題/続・選択問題」のシャーペンの色が挙げられています。
また記事の中で、③の記事へのmostigerさんのコメント

「わたしは3色のあじさいはどれも燈子を指すと考えています。そして、青色は現在の燈子の人物像、白色、ピンク色は沙弥香、侑がこれからの燈子にどのような人物になってほしいかを表していると思います。」

を引用し、別の可能性にも触れています。
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